アドトラックは東京で走らせるものだ、という前提で企画が進むことがあります。実際には地方でも走らせられます。ただし、東京と同じ内容がそのまま通るわけではありません。
都市によって条例の作りが違い、できることとできないことが入れ替わります。さらに車両を現地まで運ぶ必要があるため、日程の組み方も東京とは変わります。
この記事では、候補の都市を絞る段階で知っておきたいことを、「どの都市で何ができるか」と「遠征に何が増えるか」の2点に絞って整理します。条例そのものの中身は別の記事に置いてあるので、ここでは実施の判断に必要な部分だけを扱います。
- 可否を左右する主な条件は条例・車両の移動・音の3つ(このほか、道路使用許可が要る場合もあります)
- 福岡市は2026年10月1日の条例改正で、市外ナンバーの広告宣伝車も許可が必要になります。20平方メートルを超える広告はデザイン審査が月1回のため前倒しが必須です
- 大阪市は広告宣伝車に固有の許可基準を設けていません(2025年の市民の声への回答で、今後の対応を検討中としています)
- 名古屋市は走行中に表示を変化させることを禁止しています
- 東京都はLEDビジョンによる映像表示が許可されません
- 遠征では走行日数のほかに車両の回送日が必要になります
目次
アドトラックは地方でも走らせられる|可否を左右する3つのこと
アドトラックを地方で走らせられるかどうかは、主に条例・車両の移動・音という3つの条件で決まります。この3つを都市ごとに確認すれば、企画が成立するかの見当がつきます。
このほか、一般交通に著しい影響を及ぼす場合は道路使用許可も要ります。「地方には対応していない」と断られるとすれば、理由はたいてい車両を運ぶ日程が合わないか、その都市の条例で表現が通らないかのどちらかです。
条例は自治体ごとに違う
屋外広告物条例は、都道府県・政令市・中核市(と一部の市町村)がそれぞれ独自に持っています。国の屋外広告物法という共通の枠はありますが、具体的な基準は自治体が決めるため、東京都で通ったデザインが他の都市では通らないことがあります。
ここで注意したいのは、地方だから緩いとは限らないことです。たとえば福岡市は2026年10月1日の改正で、広告の表示面積に数値の上限を設けました。東京都には面積の数値基準がありません。面積という軸で見れば、福岡市のほうが厳しくなります。
条例の中身と審査の通し方は、別記事「アドトラックの規制と審査|都市別の条例まとめ」に詳しくまとめています。本記事では、実施を判断するのに必要な結論だけを扱います。
車両をその都市まで運ぶ必要がある
遠征とは、走行する都市まで車両を回送し、現地で運行することです。当たり前に聞こえますが、日程への影響が見落とされがちです。
走行日数と、車両が拘束される日数は別物になります。東京から福岡まで車両を動かせば、往復の回送日が走行日の前後に必要です。「3日間走らせたい」という依頼でも、車両の押さえは3日では済みません。
音を出せる時間帯と場所が変わる
拡声機の規制は自治体ごとに定められており、時間帯・場所・音量の基準が異なります。音を使う企画では、都市を変えると条件も変わります。
東京都の場合、午後7時から翌日午前8時までは拡声機を使用できません。また、学校または病院の敷地の周囲30メートル以内は使用禁止区域です。
夜のイベントに合わせて音を出す企画は、この時間帯の制約を先に確認しておく必要があります。
3つの条件が分かったところで、都市ごとに何ができるかを見ていきます。
都市別に何ができるか|福岡・大阪・名古屋・札幌・東京
都市ごとの違いは、「映像を使えるか」「音を出せるか」「どれだけ前倒しが要るか」の3点に集約されます。候補の都市が決まっているなら、その行だけ読めば判断できます。
福岡市|2026年10月1日以降は前倒しが要る
福岡市は、2026年10月1日から市内を走行するすべての広告宣伝車を許可の対象にします。車検証の本拠地が市外であっても対象になるため、東京ナンバーの車両で福岡へ遠征する場合も、福岡市の許可が必要です。
あわせて、一車両に表示する広告の面積が合計20平方メートル以内という基準が入ります。市の資料が参考値として示す一般的なサイズの車両はこの枠を超えるため、多くの案件で特例許可の手続きが必要になると見込まれます。
出典:福岡市 広告宣伝車等に係る屋外広告物条例のルールが変わります
実務で効いてくるのは、20平方メートルを超える広告に必要なデザイン審査が月1回の開催で、受付から審査日まで最長1か月を見込むと市が説明している点です。審査は月1回なので、間に合わないと翌月の審査に回ります。福岡の案件は、他の都市より前倒しで動かしてください。
大阪市|広告宣伝車固有の基準が無い
大阪市では、広告宣伝車の走行そのものは屋外広告物条例の対象外で、車体広告の意匠・大きさには具体的な許可基準を設けていません。
出典:大阪市 広告宣伝車の規制について(市民の声への回答・2025年)
ただし「規制が無いから何をしてもよい」ではありません。市は2025年の市民の声への回答で今後の対応を検討中としており、将来変わる可能性があります。また道路使用許可や音の規制は別枠でかかります。
審査が厳しそうな商材では、東京をやめて大阪での実施を先に検討した例もありました。
現時点では、具体的な許可基準が設けられていないという点で、候補に挙げやすい都市です(当社の見方)。
名古屋市|走行中に表示を変えられない
名古屋市は、車体広告の共通基準に「走行中に広告物の表示を変化しないこと」を追加しました。2024年10月1日施行です。
出典:名古屋市 令和6年度施行 名古屋市屋外広告物条例及び同施行細則の改正
走行しながら映像を切り替える使い方は、この基準に照らして企画を組み直すことになります。静止した1枚の表示で成立する内容かどうかが、名古屋で出すときの分かれ目です。
札幌市|許可期間が1か月以内
札幌市は、宣伝車を「車体利用広告」とは別のカテゴリとして扱い、許可期間を1か月以内としています。また、宣伝車の右側面と後部に電光板や映像を使う場合は、文字や映像が動かないものであることが求められます。
短期の集中的な走行とは相性がよく、長期間の継続掲出を考えている場合は更新の手続きを前提に組むことになります。
千葉市(幕張)|朝10時まで音を出せない
幕張での展示会に合わせた告知の相談で、「千葉ならLEDトラックを使えるか」を聞かれることがあります。
幕張は千葉市で、千葉県ではなく千葉市の屋外広告物条例がかかります(千葉市・船橋市・柏市は独自の条例を持ち、県の条例は適用されません)。千葉市の許可の基準には「照明装置、LED、映像装置等を使用してはならない」とあります。一方で、広告宣伝用自動車、または使用の本拠の位置が千葉市外にある自動車は、この許可そのものが要らないと条例に定められています。
ただし、それで「千葉市ならLEDを使える」とは言えません。車両を登録している自治体の条例がどう及ぶか、国の保安基準(灯火装置)の扱いが別にあるためです。当社では個別に確認してからご案内しています。
音ははっきりしています。千葉市では、車両に積んだ拡声機は午後7時から翌日の午前10時まで使えません(東京都は午前8時まで)。学校・病院などの敷地に面する場所でも使えません。午前10時より前の開場前の待機列に音で訴える企画は、千葉市では成立しません。
出典:千葉市 車両広告物の規制/千葉市屋外広告物条例/千葉市環境保全条例施行規則
東京都|LED映像が使えない(比較の基準として)
東京都では、LEDビジョンによる映像表示が許可されません。都は、LEDビジョンによる映像表示は規格に違反するため許可できないと説明しています。規格には走行中と停止中を分ける記載がありません。内照式・外照式の照明は、げん惑のおそれがなければ規格上の禁止には当たりません。
加えて2024年6月30日から、都外ナンバーの広告宣伝車も都内を走行する場合は東京都の条例の対象になりました。
出典:東京都都市整備局 東京都の広告宣伝車規制に関する説明会資料(令和6年3月)
都市ごとに映像の扱いが違うので、映像を使いたい企画は走行都市を先に決めて確認してください。
一覧表
一覧表
| 都市 | LEDによる映像表示 | 音(拡声機) | 許可までの前倒し | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 許可されない | 自治体の基準による | 申請から走行まで約1か月(都のスケジュール例) | 静止画のラッピングで面を取る |
| 福岡市 | 発光可変表示式は禁止 | 自治体の基準による | 20平方メートルを超える場合は月1回のデザイン審査を前提に前倒し | 早めに動ける計画的な案件 |
| 大阪市 | 広告宣伝車固有の基準なし | 自治体の基準による | 道路使用許可が中心 | 許可基準が未設定の点を活かしたい案件 |
| 名古屋市 | 走行中に表示を変化させられない | 自治体の基準による | 新規許可申請から適用 | 静止した1枚で成立する内容 |
| 札幌市 | 右側面・後部の電光板・映像は静止表示のみ | 自治体の基準による | 許可期間は1か月以内 | 短期集中の走行 |
| 千葉市 | 許可の基準では不可(広告宣伝用自動車などは許可の対象外・要確認) | 午後7時〜翌午前10時は不可 | 広告宣伝用自動車、または使用の本拠が市外の自動車は許可不要と読める(要確認) | 静止画のラッピングで昼間に走る |
音の基準は自治体ごとに異なるため、走行都市が決まった段階で環境部局の基準を確認してください。
都市の当たりがついたら、次は遠征そのものの段取りです。
遠征で増えるもの|車両の移動・人・日数
遠征で増えるのは、費用よりもまず日数です。走行日数だけを見て日程を組むと、後から入らないことが分かります。
東京で走らせる場合と比べて何が増えるのかを、先に把握しておいてください。
遠征で増えるもの|車両の移動・人・日数
| 項目 | 東京で走らせる場合 | 遠征する場合 |
|---|---|---|
| 車両の押さえ | 走行日数分 | 走行日数+往復の回送日 |
| 許可の窓口 | 区または多摩建築指導事務所 | 都市ごとに確かめる(走る都市か、車の本拠地か) |
| ドライバーの拘束 | 走行日数分 | 回送を含めた日数 |
| デザインの入稿期限 | 審査日程から逆算 | 現地の審査日程から逆算(福岡市で20平方メートルを超える場合は月1回) |
車両の回送に日数がかかる
回送とは、走行する都市まで車両を移動させることです。東京から遠い都市ほど、前後に必要な日数が増えます。
この日数は走行日ではありません。広告として表示されていない移動時間です。ここを見込まずに「現地で3日走らせる」とだけ決めると、車両のスケジュールが合わなくなります。
運行できる時間は1日あたり決まっている
1日に走れる時間には上限があります。当社の場合、基本の運行は9時間拘束・8時間運行です。音を出す時間は、走る地域の条例で決まっている時間に従います。
つまり1日中ずっと走り続けるわけではありません。「ターゲットが街にいる時間帯」にどう当てるかを、限られた8時間の中で設計することになります。
許可の窓口は都市ごとに確かめる
走る都市の許可が要る自治体と、車の本拠地の自治体の許可による自治体があります。東京の車で福岡を走るなら福岡市の許可が要ります。回る都市ごとに、どちらの考え方かを確かめます。
複数都市を回る企画では、都市によって手続きが要るかどうかが違います(千葉市のように、使用の本拠が市外にある車には許可を求めない自治体もあります)。都市を増やすほど、準備期間は長くなりがちです。
会場の近くで使いたいときは、時間と場所に注意
イベントやライブに合わせた相談では、「本番の数日前から1週間前まで、会場の近くを走らせたい」「開場前に会場の近くで停めて、音楽を流したい」という要望をいただくことがあります。
会場の近くを走らせるのは、ルートを決めれば対応できます。注意が要るのは停めて使うことです。公道に停めたまま表示や音を出し続けるのは、駐停車の規制や道路使用の許可にかかりやすく、場所ごとに警察への確認が要ります。音にも時間の決まりがあり、同じ場所で流せるのは東京都では続けて10分以内、千葉市では1回10分以内です。千葉市は午前10時まで音を出せないので、朝の開場前の待機列には音で訴えられません。
遠方の会場へ遠征する場合は、出張の費用が別にかかることがあります(地域によって異なります)。どこでどう使いたいかを先に伺えば、通る形に組み替えてご提案します。
当社は自社でトラックを保有・運用しているため、回送と運行の段取りを自社で組めます。都市が複数にまたがる案件でも、どの順番で回れば日程に収まるかを含めてご相談いただけます。
アドトラックのサービス詳細を見る地方で走らせるまでの段取り
地方で走らせる場合の逆算は、「現地の審査日程」を起点にします。東京の感覚で逆算すると、福岡では間に合いません。
東京を基準にした場合
東京都では、申請から走行開始まで約1か月が目安です(都の示すスケジュール例。修正や申請の集中で延びます)。デザインの自主審査を受け、屋外広告物の許可を申請し、許可が下りてから走行します。
出典:東京都都市整備局 東京都の広告宣伝車規制に関する説明会資料(令和6年3月)
東京を基準にした場合
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| デザイン制作 | 完全データでの入稿が前提 |
| 審査・許可申請 | 申請から走行まで約1か月(都のスケジュール例) |
| 回送 | 遠征の場合は前後に必要 |
| 走行 | 1日あたり8時間運行 |
福岡を基準にした場合
福岡市で20平方メートルを超える広告を出す場合は、市との協定締結とデザイン審査が前に入ります。デザイン審査は月1回の開催で、受付から審査日まで最長1か月です。
審査の開催は月1回なので、間に合わないと翌月の審査に回ります。10月以降に20平方メートルを超える広告を出す福岡案件は、最長で1か月のずれを見込んで、東京より前倒しで考えてください。
なお当社の場合、申請業務は当社側で行います。お客様にご用意いただくのはデザインデータの入稿のみです。
費用はどう決まるか
遠征の費用は、基本の運行にかかる費用・遠征に伴って増える費用・制作にかかる費用の3つに分かれます。都市と日数が決まらないと総額は出ません。
何で金額が変わるか
金額を動かす要素は、主に次のとおりです。
- 走行する日数(および車両の拘束日数)
- 走行する都市までの距離(回送に要する日数)
- 車両のサイズと台数
- デザインの制作を依頼するかどうか(デザインは完全データ支給が前提で、制作費は別枠です)
都市と日数が決まった時点でお見積もりをお出しします。候補が複数ある段階でも、都市ごとの違いを含めて比較できる形でご提示できます。
料金の相場を先に知りたい場合
料金の目安は「アドトラックの料金相場」にまとめています。地方の遠征費を含む総額は案件ごとに変わるため、都市が決まった段階でのお見積もりが確実です。
よくある質問
東京のトラックを地方まで持っていけますか?
持っていけます。ただし許可の決め方は自治体によって違い、走る都市の許可が要るところと、車の本拠地の自治体の許可によるところがあります。たとえば福岡市は2026年10月1日から、車検証の本拠地が市外であっても市内を走行する広告宣伝車を許可の対象にします。東京で許可を取っていても、福岡を走るなら福岡市の許可が別に必要です。
福岡でアドトラックを走らせるのに、いつから動けばよいですか?
20平方メートルを超える広告を出す場合は、東京より前倒しで動いてください。そのとき必要な福岡市のデザイン審査は月1回の開催で、受付から審査日まで最長1か月を見込むと市が説明しています。間に合わないと翌月の審査に回ります。
大阪は規制が無いと聞きましたが、何をしてもよいのですか?
そうではありません。大阪市が広告宣伝車について固有の許可基準を設けていないだけで、道路使用許可や音に関する規制は別にかかります。また市は2025年の市民の声への回答で今後の対応を検討中としているため、将来変わる可能性があります。
LEDビジョンのトラックはどの都市なら使えますか?
東京都では許可されません。車体利用広告の規格として映像表示が禁止されているためです。名古屋市は走行中に表示を変化させることを禁止しており、福岡市は発光可変表示式の広告物を禁止しています。映像を使う企画は、走行都市ごとに可否を個別に確認したうえで組んでください。
地方で音(アナウンス)は出せますか?
出せる都市が多いものの、時間帯と場所の制約は自治体ごとに異なります。東京都では午後7時から翌日午前8時までは拡声機を使用できず、学校または病院の敷地の周囲30メートル以内は使用禁止です。走行都市が決まった段階で、その自治体の基準を確認してください。
複数の都市を続けて回れますか?
回れます。ただし都市によって許可の手続きが要るかどうかが違い、都市間の回送日も必要になります。準備期間は都市を増やすほど長くなるため、走行の順番は審査日程の早い都市から組むのが現実的です。
まとめ|都市を決めるときの順番
地方でアドトラックを走らせるときは、次の順番で詰めると手戻りが出ません。
- その都市で企画の表現が通るかを確認する。映像を使うのか、音を出すのかで候補は絞られます
- 現地の審査日程から逆算する。福岡市で20平方メートルを超える広告のようにデザイン審査が月1回の場合は、ここが日程を決めます
- 回送日を含めて車両を押さえる。走行日数と拘束日数は別物です
- 都市と日数が決まってから見積もりを取る
本記事は2026年9月時点の情報をもとに整理したものです。条例は改正されるため、実際の可否は各自治体の公式ページと所轄の窓口で確認してください。法的な判断が必要な場合は専門家にご相談ください。
条例の中身と審査の通し方は「アドトラックの規制と審査|都市別の条例まとめ」にまとめています。あわせてご覧ください。